海外のユーザーに国内ECサイトから商品を購入してもらう「越境EC」は、近年新たな売上拡大の手段として国内の企業から注目されている販売モデルです。インターネット上で商品を購入する消費者数の増加を背景に越境EC市場も拡大しており、特に中国やアメリカからの購入が増加しています。これから海外に販路を広げたいと考えている企業にとっては非常に魅力的な選択肢です。
本記事では、企業がこれから越境ECを始める上で理解しておきたい市場の規模感やチェックしておきたい海外プラットフォームについて紹介します。
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目次
越境ECとは?
越境ECとは国外から取引されるEコマース(電子商取引)のことで、消費者が居住している国以外のECサイトから購入したものを指します。例えば中国に住んでいる人が楽天のショップで商品を購入した場合が該当します。もともと外国人からの人気が高かった家電をはじめ、化粧品や食品などの日用品に対する人気も高まっています。
越境ECの市場規模について
経済産業省が2019年に公開した報告書によると、日本・米国・中国の3か国間における越境EC市場規模は2兆3,583億円でした。内訳は、中国にいる消費者が日本国内のECサイトで購入した金額が1兆5,345億円(前年比18.2%増)、アメリカにいる消費者が日本国内のECサイトで購入した金額が8,238億円(前年比15.6%増)といずれの国との間でも伸びていました。日本国内のBtoC分野でのEC市場は、17兆9,845億円(前年比 8.96%増)なので、EC全体で越境ECが占める売上の比率は13%ほどということができます。(出典:「平成 30年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)報告書」・経済産業省)
https://www.meti.go.jp/press/2019/05/20190516002/20190516002-1.pdf
中国やアメリカ向けの越境EC販売額は前年比15~18%増加しており、今後も拡大していくと見られています。前述の報告書でも2022年に中国向け越境ECが2兆5,144億円、アメリカ向け越境ECが1兆3,925億円にまで成長すると試算されており、将来性が高い市場だと捉えられています。(なおこの試算は東京オリンピック開催やコロナ禍の影響は考慮されていません)
またインバウンドで日本を訪れた際に購入した商品を気に入って、帰国後に越境ECで購入するリピート購入する人の存在が日本政府観光局の調査から明らかになっています。2020年は新型コロナウイルス感染症の影響でインバウンド目的の訪日客は激減しましたが、将来的に訪日客数が戻ってくればそこから越境ECを利用する人も自然に増えていくと見られています。
日本では少子化が進んでおり、ターゲットを国内だけに絞ってしまうと、いずれ市場は上限に達します。越境ECは成長市場であることに加え、海外からの消費者を獲得する有効な手段でもあるため、ECサイトを運営する事業者は越境ECが持つ可能性に大きく期待しています。
越境ECのメリット・デメリット
では、今から越境ECを始めるべきでしょうか?ここでは事前に押さえておきたい越境ECのメリット・デメリットを紹介します。
越境ECメリット
越境ECを始めるメリットは、以下のものがあります。
1)商圏が広がる
アメリカ、中国、それにインド、インドネシアなど、日本よりもはるかに人口が多い国の消費者をターゲットにすることができるため、越境ECにより商圏が広がります。
2)海外進出するよりも低コスト
海外にリアル店舗を出店しようとすると、場所の契約から販売スタッフの確保まで多額の費用と多くの時間がかかります。越境ECであればコストを抑えつつ低リスクで海外への販売が始められます。
越境ECデメリット
越境ECを始めるデメリットとしては、以下のものがあります。
1)ルールの違い
販売する国によって原材料の記載方法が異なる場合や日本とは違う販売規制に対応する必要があるなど、国ごとに異なる取引規則への対応が必要です。そのため、その国の法律や規制に詳しい専門家のサポートが必要になります。
2)配送料が高い
海外発送は配送コストがかかり、通常のEC販売よりも割高になります。そのため消費者に対してお得感をアピールしにくくなります。
3)複数の通貨・決裁方法に対応する必要がある
中国であれば銀聯、アメリカではPayPalなど、国によってよく利用される支払い方法が異なります。ターゲットとなる国の通貨・決済方法に対応する必要があります。
4)外国語対応が必要
ECサイトの表示自体は自動翻訳で対応可能ですが、その場合細かなニュアンスが伝わらないことがあります。そのため正確に情報を伝えたい場合には外国語を理解するスタッフのチェックが必要になります。さらに外国語で問い合わせが来たメールに対して対応できるスタッフが必要になります。
越境ECサイトの始め方
越境ECを始める方法としては、以下のような方法があります。①がもっともハードルが低く、とりあえず始めてみたいという方におすすめです。
①国内の越境EC対応モールに出店する
国内の大手ECモールでは、越境ECに自動で対応しているサービスを行っているところがあります。この場合は、事業者側は純粋に国内モールに出店するだけで、自動的に越境EC対応が完了することになります。
例えばヤフーショッピングやZOZOTOWNには海外からの注文に対して代理購入するサービスのBuyeeが連携しているので、出店するだけで自動的に海外からのユーザーが購入できるようになります。また、近年、話題のshopifyも越境ECに対応したショッピングモールの1つです。世界中の決済方法や言語をカバーしており、さらに各国の税率への対応もしています。日本から海外へ向けた越境ECにチャレンジしていきたいサイトには、最適なプラットフォームといえるでしょう。
②海外ECモールに出店する
海外のECサイトやモールに出店する方法です。Amazon、天猫国際などが有名です。詳しくは後述します。
③自社で越境ECサイトを構築する
国内にある自社ECサイトを海外対応する方法です。言語を多言語化することで海外からの購入に対応します。配送はEMS等による直送が主流です。
ここ数年で自動翻訳の精度は飛躍的に向上しており、Google翻訳を導入するだけでもある程度対応ができるまでになっています。
個人情報保護には注意が必要
ここで注意したいのが、海外からのユーザー情報の管理です。EU圏では2018年よりGDPR(一般データ保護規則/General Data Protection Regulation)が施行されています。これはEU圏内の居住者の個人データ保護を目的にしたものですが、日本を含む域外であってもEU圏内のユーザー情報を保有している限りは法律を守る必要が発生します。つまり越境ECサイトを運営していてフランスからアクセスがあったり商品購入があったりした場合は、データを安全に保護しなくては処罰対象になるということです。
スマホ対応は必須
自社で越境ECを始めるにあたり、国内・海外モールへ出店する場合は問題ありませんが、自社でECサイトを構築する場合にはスマートフォン対応は必須です。
ペイパルと調査会社イプソスが実施した越境EC調査によると、アメリカのユーザーが越境ECで利用する主なデバイスはPCが50%、スマートフォン」が32%、中国ではPCとスマートフォンが共に42%でした。調査は2018年時点なので、現在はさらにスマートフォン比率が高くなっているはずです。
日本よりもアメリカ、中国のほうがスマートフォン経由のオンラインショッピングに慣れており、特に中国ではスマートフォン活用が非常に進んでいるため、スマートフォンユーザーをメインターゲットにサイトを構築する必要があります。
日本企業が出店しやすい注目の海外ECモールを紹介
拡大を見せる越境EC市場で日本企業が出店しやすい注目の海外ECサイトを5つ紹介します。
Amazon.com(アマゾンコム)
日本でもECサイトとしておなじみのAmazonは、アメリカに本拠を置き、日本を含め世界18か国でサイトを運営しています。マーケットプレイスに出店するほか、Amazonグローバルセリングに登録すると、連携ツールを利用して北米、ヨーロッパ、アジアのAmazonマーケットプレイスに商品を出品して販売することができます。
天猫国際(TMALL GLOBAL)
中国のIT企業グループのアリババ(阿里巴巴集団)が運営する中国最大のECモール、天猫(TMALL)の越境ECプラットフォームが天猫国際(TMALL GLOBAL)です。ユーザーは30歳以下のデジタルネイティブユーザーが多く、安全や品質にこだわりを持っている中間所得層が半分近くを占めています。
日本商品は人気で、アリババ側のサポート体制も充実しています。販売形態ごとにモール上でショップを持てる「Tmall Global (TMG)」、アリババが仕入れて販売する「Tmall Direct Import (TDI)」、天猫上の専用ストアで販売する「Tmall Overseas Fulfillment (TOF)」の中から自社に合ったモデルを選択することができます。
化粧品なども売れ筋で、三越伊勢丹グループやマツモトキヨシなどが出店しています。
海囤全球(JD Worldwide)
中国第2位のECモールとして知られる京東商城(JD.com)の越境ECプラットフォームが海囤全球(JD Worldwide)です。海囤全球側が商品を仕入れて販売する直販モデルを採用しており、天猫国際よりもコストを抑えて出品できるのが特徴です。
家電などが売れ筋で、ヤマダ電機などが出店しています。
网易考拉(Kaola)
网易考拉(Kaola)は中国の越境ECで高いシェアを獲得しているECモールです。運営しているのは日本でも荒野行動などのモバイルゲームを提供していることで有名な中国の大手IT企業の網易(ネットイース)の子会社網易考拉が運営しています。海囤全球と同様、网易考拉側が商品を買い付けてモールで販売する直販モデルを採用しています。
Lazada(ラザダ)
東南アジア圏で最大のECモールであるLazada(ラザダ)は、「アジアのAmazon」とも呼ばれる現地で知名度が高いサービスです。販売方式もAmazonと似ていて、Lazada上でアカウントを解説して出店します。商品が売れた場合に販売手数料をLAZADA側へ支払う方式です。おおむね5%以下でコストを抑えて出店できるメリットがあります。
注目したい楽天の動き
楽天2020年4月30日、同社で提供していた越境ECプラットフォームのRakuten Global Market(楽天グローバルマーケット)を同年6月末で終了すると発表しました。これは楽天に出店しているショップが販売している商品を海外から購入できるサービスで、中小規模のショップや企業にとっては手軽に越境ECを始められる手段でした。今後は同社が展開している「海外パートナー旗艦店」事業に注力していく予定とのこと。これは楽天が海外の大手ECモールと連携して商品を販売するもので、楽天側が商品を仕入れて海外ECモール上の楽天店舗で販売する形式です。
越境ECの勢いが弱まったわけではありませんが、手軽に海外に商品を販売したいというニーズの受け皿だったRakuten Global Marketが終了したことは市場に大きな影響があるでしょう。
人気の商品
日本貿易振興機構が公表した「中国の消費者の日本製品等意識調査 2018年12月」によると、中国人が越境 EC サイトで直近1年以内に購入した・購入したい日本製品でもっとも多かったのが「基礎化粧品」で46.9%、次いで「メイクアップ化粧品」46.1%、「食品」43.5%、「マンガ・アニメ」43.2%と続きます。高品質でユーザー評価が高い化粧品や安全性・信頼性がある日本産の食品に人気が集まっています。
越境ECでのライブコース活用
越境ECの販売環境を準備したとしても、自社商品を海外の消費者にPRするのは難しいものです。近年はSNS利用が増加していることを背景に、Facebook、Instagram、TikTokなどのSNSに投稿するほかSNS広告に出稿するという手段があります。中国の場合はSNSが制限されているため、中国独自のWeChatやWeiboなどを利用した情報発信が欠かせません。
さらに最近中国で注目されているのがKOL(Key Opinion Leader)と呼ばれるインフルエンサーの存在です。国内でも生配信で商品を紹介して販売するライブコマースが注目を集めていますが、先行する中国ではKOLが商品を紹介して一度に何千万円も販売する事例もあるほど勢いがあります。
国内在住の中国人を活用したライブコマース施策などもプロモーション施策として有効でしょう。
越境ECをご検討中の方。ご相談ください!
越境ECの市場は年々拡大しており、新しい顧客を開拓する方法として多くのEC事業者に期待されています。手軽に開始できる選択肢も揃ってきたので、テスト的に開始して様子を見るということもできるようになりました。自社で海外販売が可能な商材を持っている事業者は、ぜひ検討してみてください。
株式会社ライフエスコートでは、越境ECの運営のコンサルを行っております。海外でネット通販をご検討中の企業様がいましたらお気軽にご連絡ください。
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