経済産業省の発表(2020年7月)によると、令和元年の衣服・服飾雑貨のEC化率は13.87%。つまり85%以上が実店舗で商品を購入している計算になります。2020年の緊急事態宣言により急激にオンラインでの商品購入が増加しましたが、それでも心理的に購入に踏み切れないという人もまだ多く存在します。
オンライン購入へのハードルになるのが、「洋服やシューズは試着しないとサイズ感や着用感がわからないので買いにくい」「ECサイトでは写真が少なくイメージできない」「ショップでスタッフさんにアドバイスしてほしい」といった声です。
これらが理由で購入にまで至らないという人は少なくなく、逆にここの課題を解決できさえすれば、オンライン購入に踏み切れるという潜在顧客でもあります。
その課題解決策として、いまアパレル業界を中心に導入が進んでいるのがSTAFF SMARTをはじめとした「デジタル接客」と呼ばれるツールです。今回はデジタル接客ツールによる販売拡大の可能性について詳しく解説します。
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目次
コロナ禍でさらに注目される「デジタル接客」とは
新型コロナウイルス感染症の影響によって、人々の購買行動は大きく変化しました。ひとつはモノを買う手段がオンラインへと移行したこと、そしてオンライン上で受けられる「オフラインと同様の接客」が一般化したことです。
後者はデジタル接客と呼ばれるもので、ショップのスタッフが買い物客に対して商品のおすすめや問合せなどの対応を、Webサイト上やInstagramなどのSNS上で行うことを指します。
新規に「デジタル接客ツール」が登場したというよりは、もともと存在していた実店舗からWebへの送客サービスやチャットボット、ライブコマース、パーソナライズ情報の表示、SNSでの情報発信など、デジタル上でユーザー対応を行うものを総称してデジタル接客と呼ぶようになったと考えるとイメージしやすいかと思います。
具体的には、ZoomやLINEを用いたビデオ通話による接客や、実店舗スタッフによるWebサイト・SNSへの情報発信、店舗スタッフが対応するチャット接客などがあります。顧客は店舗にいて、対応するスタッフが遠隔で接客する場合もあります。
デジタル接客が登場した背景
従来、小売業における接客とは、実店舗において対面で買い物客に対応し、適切な支援をして満足してもらうことでした。一方オンラインショッピングでは、ユーザーが自発的に商品を選び、購入手続きまでを行うことが一般的で、店舗側の対応は含まれていませんでした。
しかしオンラインショップで商品を購入する人が増えてくると、差別化や顧客満足度向上、購入率アップを目的としてユーザーのWeb閲覧履歴や購入履歴をもとにしたパーソナライズ化された情報表示やチャットボットによる24時間の問合せ対応、カゴ落ち客へのメール送信などが行われ始めます。
それに加えてアパレル向けにファッションコーディネート写真と商品情報を紐づけて投稿するツールが2016年頃から先進的なブランドで導入されはじめ、実店舗スタッフの投稿がオンラインショップでの売上に貢献。
さらにライブ配信で商品の特徴を説明して販売につなげるライブコマースなども登場しました。それらの動きを背景に、2020年に実店舗での接客や窓口における対応が難しくなったことで、これらのデジタル接客は加速度的に実店舗を持つ企業で広がりました。
スタッフに相談しながら購入したいというニーズが高い業種と相性がよく、最近ではジュエリー業界でも導入が進んでいます。ハイジュエリーブランドのショーメでも、2020年5月に自宅にいながら専門スタッフからの接客が受けられるサービス「サロンドゥショーメオンライン」を開始しました。
TEL、Facetime、LINE、Zoom、WeChatと複数の手段を選べるのが特徴で、銀座本店のアドバイザーがニーズに合った商品の紹介やサイズの質問、ブライダルリングの選び方などのアドバイスを行います。
注目されるデジタル接客ツール「STAFF START」
デジタル接客ツールとして注目されているのが、スタートアップのバニッシュ・スタンダードが提供する「STAFF START」です。これは実店舗のスタッフがコーディネート写真に商品情報を紐づけてECサイトやSNSに投稿できる機能や、商品のポイントや特徴を投稿できる機能、スタッフが投稿をまとめてコンテンツ化できる機能、効果測定機能などを持つツールです。
女性向けアパレルブランドのJILL STUARTでは、2018年からSTAFF STARTを導入し、ツール経由の売上がEC販売全体の半分以上、STAFF STARTのコーディネート経由で購入した率は通常と3倍の効果があったと発表されています。
2020年には導入数が急増、アパレル系企業を中心に、コスメ、食品、ショッピングモールなど、さまざまな業種に利用が広がっています。
OMOの観点からみたデジタル接客
OMO(Online Merges with Offline)とは、リアルの場の体験・情報(オフライン)とインターネット上の体験・データ(オンライン)を融合して考えるマーケティング戦略のことです。
日常的にスマホが生活の中心になっている中国・アメリカで先行しており、無人店舗のAmazon Goや顧客に新たな価値を提供するフーマーフレッシュ(盒馬鮮生)のような事例が知られています。
デジタル接客では、商品検討から比較、購入までデジタル上で完結することが多くなります。デジタル接客で得たデータを蓄積して分析・活用することで、「オンラインでおすすめしたジャケットと、それに合わせる小物を最寄りの店舗に取り置きして見に来てもらう」といった、今まで以上に価値の高い実店舗での買い物体験を提供することが可能になります。
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実店舗での販売からデジタル接客で変わること・変わらないこと
いままで実店舗で販売していたスタッフは、接客方法がデジタルになることで変わること、代わらないこと、両方があります。
買物の仕方が変わっても今までと同じお客様であること(変わらない点)
デジタル接客では、実店舗のスタッフがオンライン上でも対応します。コミュニケーションを取るチャネルは変わりますが、相手は今までと同じ顧客であることには変わりません。
目の前にいないお客様にどう情報を伝えるか(変わる点)
デジタル接客のばあい、画面越しの相手に商品をすすめたり説明したりします。そのため、目の前にいない相手に対してどうやって情報を伝えるかが大切になります。
今までであれば「手に取ってご覧ください」と案内して実際に手触りや色合い、サイズ感などを確認してもらうことができました。デジタル接客ではそれができないため、上手に情報を伝える工夫が必要になります。
デジタルでの接客方法のコツ
デジタル上接客を導入する際には、以下に気を付けることで導入がうまくいく可能性が高まります。
ペルソナ設定
ペルソナとは、ターゲットに人格を与えたもので、より具体的なユーザー像です。「高橋桃花、23歳、新卒IT系企業の事務スタッフ、都内在住。ファッションが好きで毎月10万円程度ZOZOTOWNやAmazonで買い物をする。
流行りはSNSでチェックしている。」など具体的なイメージが掴みやすいように特徴を与えていきます。ペルソナを設定することで、スタッフ間でターゲットのイメージが共有できます。さらにデジタル接客のサービス設計を行う際にスムーズに進みます。
デジタルプラットフォーム選び
プラットフォームとしては、Webサイト(オウンドメディア、ECサイト)、Instagram、LINE、Zoom、専用ツール(AICO、STAFF START等)などがあります。Zoomのようにビデオ通話に特化したものや、LINEのように日常的にコミュニケーションを行うもの、Instagramのように画像中心のもの、専用ツールのように必要な機能をパッケージ化したものなど特徴はさまざまです。
また、コスト面でも無料で利用できるもの、月額利用料が必要なものなどがあります。それぞれのメリット、デメリットをよく理解した上で、スタッフが使いやすいもの、ストレスなく使い続けられるものを選ぶようにしましょう。
コミュニケーションの方法
コミュニケーションの方法としては、スタッフの写真を投稿しておすすめの理由をコメントする、チャットやビデオ通話で接客する、ライブ配信で商品を紹介するなどがあります。自分の顔や名前を出すことに抵抗があるスタッフが多い場合には、チャットのほうが適しています。
ITスキルがあまり高くないスタッフが多い場合は、自分のスマホで簡単に操作できるもののほうがよいでしょう。どのようなコミュニケーション方法を提供するかは、顧客のニーズと運用のしやすさを考慮して選択しましょう。
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デジタル接客を用いた評価基準
従来は実店舗での売上とECサイトの売上は分けているところがほとんどでした。しかしそれでは正しく評価できないため、実店舗での接客に加え、デジタル接客もスタッフの評価基準として導入する企業が増えています。
逆に、適切な評価基準を設けないと、デジタル接客した実績が正しく評価されずにスタッフのモチベーションが下がってしまう可能性もあるため注意が必要です。
STAFF STARTのように、どのスタッフのどの投稿からいくら売れたのかを可視化し、システム内にスタッフを評価できる機能が入っているものを選ぶと、円滑に評価が行えます。
デジタル接客によって期待されること
デジタル接客を取り入れることで、スタッフの可能性が高まります。今後以下のようなことが期待できます。
地方の店舗でも売上を伸ばすことができる
デジタル接客は場所の制約をなくします。集客が難しい地方の店舗であってもデジタル接客を活用することで商圏を全国に広げることができます。デジタル接客であれば全国どこからでも、海外からでも対応できるので、地方の店舗でも売上を伸ばすことが可能です。
また通常であれば需要が少なく売上が見込めない商品でも、デジタル接客で上手にアピールすることで販売を伸ばすことができます。
人材を有効利用できる
育児や介護でフルタイム勤務が難しいスタッフであっても、デジタル接客であれば無理なく仕事をすることができます。
また地方や海外在住のスタッフでも接客をすることが可能です。アパレル業界でも人手不足解消は課題になっており、デジタル接客ツールの導入によって、働きやすい環境づくりや離職防止にもつながります。
スタッフのインフルエンサー化
デジタル接客では個々のスタッフが前面に出て接客を行います。そのため「〇〇さんが紹介する商品が好きなのでチェックする」「××さんは自分と同じ肌タイプなのでメイクの参考になる」など、個人でファンが付きやすくなります。さらにそれが進むと、オンラインでファンになったスタッフに合うために来店するという循環も生まれていきます。
スタッフのモチベーション向上
実店舗の場合、スタッフの接客が良く来店客が商品を購入したとしても、そのスタッフの成果として評価するのは困難です。
しかしデジタル接客は細かなデータを取得できるため、どのスタッフの接客で商品が購入されたかを把握することができます。それにより、自分の接客対応と成果が結びつくためスタッフのモチベーション向上につながります。
2021年コロナ禍を生き抜くためには
これからのECサイト運営を考える上で、デジタル接客は見逃せないキーワードです。2021年も引き続き新型コロナウイルスの影響で実店舗への来店が控えられると考えられており、デジタル接客をはじめとした自社ECサイト強化が売上増加のためには不可欠になります。
ひとくちにデジタル接客ツールと言ってもさまざまなソリューションがあるので、実店舗を持ちオンラインでの売上をアップしたいと考えている企業は、自社に合ったものを取捨選択した上で導入可能性を検討することをおすすめします。導入を迷っているのであれば、導入企業数が多いSTAFF STARTを検討してみるという選択肢もあるでしょう。
コロナ禍の影響もあり、ECサイトを立ち上げたい、ECサイトやECモールで売上を伸ばしていきたいという問い合わせを多く受けています。SNSやYoutubeでのEC戦略、withコロナ時代のEC業界の求人についてなど。お困りごとがありましたらどうぞお気軽にご相談ください。
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