ECサイトとひとことで言っても、さまざまな運営方法があります。運営していくECサイトの規模やその目的などから、自社の業務に最適な運営方法を選ぶことが大切です。
ここでは、新規事業としてECサイト立ち上げを予定している方や、Amazon(マーケットプレイス型モール)、楽天市場(テナント型モール)といったモール型ECサイトを卒業し、自社ECサイトの運営を考えている方のためのECサイトの立ち上げ方をまとめました。個人でECサイト運営を始めようとされている方や、自社ECサイト構築を検討している担当者様の参考となれば幸いです。
目次
ECサイトの立ち上げ方を検討する
まずは、どのようなサイトを構築したいのか、どのようなサイトが自社には必要なのかを検討します。そのうえで、さまざまあるECサイトの構築方法を選択します。構築したいECサイトをできるだけ具体的に思い描き、完成図に合わせた方法を採用することが大切です。この段階で、予算とスケジュールについてもある程度は検討しておく必要があるでしょう。開発会社に依頼する場合は、思い描いた完成図を文書化したRFP(提案依頼書)を作成し、開発会社と目標を共有していきます。
ECサイト立ち上げ方法の種類
まずはECサイトの構築方法として、下記の4つのプラットフォームの中から、自社に最適な方法を選ぶ必要があります。サイト年商規模にはあくまでも目安です。重要なのは各サービスの機能、カスタマイズができるかどうかの拡張性、初期費用・月額費用。よく比較検討し、自社に合うサービスを見つける事が大切です。
ASPを使ってECサイトを立ち上げる
ASPとはApplication Service Providerの略で、業務用のアプリケーショソフトをインターネットを通して提供するサービスのこと。ECサイトとして提供されているシステムを、月額制などでレンタルして利用します。
ASPの最大のメリットは、サポート体制が充実していること。一通り機能を取り揃えているうえに、ソフトウエアやサーバの管理が不要です。特別なスキルは必要なく、ブラウザ上のみで簡単にEC管理やその運用が可能です。少ない負担ですぐに導入できるASPは、低コストで導入したい人、手軽にECサイトを始めてみたい人、個人でECサイト運営を考えている人にはお勧めといえるでしょう。
デメリットとしては、機能や容量に制限があること。カスタマイズが自由にできなかったり、顧客情報の抽出ができないASPも多く顧客管理が難しいこともあります。また、ASP事業者のサービス提供が終了してしまうと継続利用できなくなるなど、事業者の都合に左右されてしまうリスクがあることも理解しておく必要があります。
メリット | ・低コスト ・ブラウザ上で簡単に運営できる ・サーバの管理、インストール・構築など不要 ・機能が一通り揃っていてサポート充実 |
デメリット | ・デザインのカスタマイズに制限あり ・機能・容量に制限あり ・顧客情報の抽出・保存ができない ・ASP事業者のサービス利用停止のリスク ・セキュリティの問題(ID/PASSワード管理) |
費用 | 初期費用:0円~数十万円 月額費用:数千円〜5万円程度 |
参考 | ・STORES ・BASE ・カラーミーショップ ・Shopify ・フューチャーショップ ・ショップサーブ など |
オープンソースを使ってECサイトを立ち上げる
オープンソースは、インターネット上で無料公開されているプログラムのソースコードを利用し、手軽にECサイトをオープンできる方法です。サーバーの維持費のみで運営ができるため、低コストでの導入が可能です。
誰でも改良のできるソフトウェアのため、デザインやレイアウトの改良、機能の拡張など自由にカスタマイズでき、思い通りのショップを実現できます。デザインプレート・集客・販促・決済・カスタムフィールド・セキュリティなどに関するさまざまな有料のプラグインが利用できる場合もあります。
カスタマイズにはある程度のスキルが必要で、サーバー管理やソフトウェアの知識はもちろん、セキュリティに関する専門知識も最低限必要となります。たとえ公開されていたプログラムにバグが発生していた場合でも、その責任はソースコードを利用した側の責任となります。また、有名なオープンソースほどハッキングされやすい傾向にありますので注意が必要です。
メリット | ・独自開発するより低コスト ・機能が一通り揃っていてすぐにECサイトをスタートできる ・機能拡張が可能 ・サービス提供者のサービス提供終了のリスクなし |
デメリット | ・バグの責任や対応は自社で解決する必要がある ・セキュリティー上の問題に対応する必要がある ・保守やバージョンの寿命が短いためアップデートが必要(人材の確保) |
費用 | 初期費用:0円~数百万円 月額費用:数千円~数百万円 |
年商目安 | 1億円~5億円 |
参考 | ・EC-CUBE ・magento など |
パッケージを使ってECサイトを立ち上げる
パッケージとは、必要な機能があらかじめついているパッケージソフトウェアをもとにカスタマイズして開発する方法です。いうなればオープンソースの製品版で、きちんと開発で作りこまれたソースコードのフレームワークをもとにECサイトを構築します。
サーバーの設置や自社に合わせたカスタマイズが必要なため、ASPよりも導入には時間がかかります。ソフトウェアやシステム管理、サーバー管理、セキュリティなどについての専門知識も必要です。
しかし、下記で説明するフルスクラッチの開発のように一から開発するとなると、その費用と時間は莫大にかかりますが、基本機能が備わっているパッケージならそれよりもコストを抑えて短期間でECサイトを構築することができます。そのため、比較的中規模から大規模ECサイトに利用されることが多いです。
ある程度の資金力と技術力があり、自由にカスタマイズをしたいが低コストで抑えたい場合にはおすすめの方法といえるでしょう。
メリット | ・拡張性が高く自由にカスタマイズできる ・他システムとの連携が可能 ・スクラッチと比較すれば低コスト ・アクセスの多い中規模・大規模ECサイトにも対応できる |
デメリット | ・インフラやサーバ設置が必要 ・バージョンアップ時に費用がかかる ・自社にあわせたカスタマイズには時間が必要 |
費用 | 初期費用:数十万円~数千万円 月額費用:数万円~数百万円 |
年商目安 | 1億円~ |
参考 | ・Orange EC ・SI Web Shopping ・ecbeing など |
フルスクラッチを使ってECサイトを立ち上げる
フルスクラッチとは、既存のソフトウェアやソースコードなどは一切使用せずに、一からシステムを開発しECサイトを構築する方法です。すべての要件において自由に開発できるため、既存の自社システムとの連携やあらゆる機能の実装が可能です。
上記で紹介してきた方法の中でも、導入にかかる費用と時間がもっともかかるフルスクラッチには、高い資金力と技術力が必要です。サイト作成やサーバ管理はもちろん、システム運営、保守、セキュリティなどあらゆる面で専門的な技術が必要となります。大規模ECサイトや技術力を備えた会社が独自にECサイト構築・開発を行う際に使われる方法です。
メリット | ・自社のシステムに最適な開発が可能 ・仕様の変更も対応可能 |
デメリット | ・高コスト ・ECサイト開発に時間がかかる・高い技術力と資金力が必要 |
費用 | 初期費用:1千万円以上 月額費用:数十万円以上 |
年商目安 | 10億円~ |
参考 | ・ZOZOTOWN ・UNIQLO など |
ECサイト立ち上げのための資金とスケジュール
ECサイト構築方法が決定したら、具体的に予算についても決めていきます。
予算は、初期に発生するECサイト開発費用だけでなく、月額費用や保守にかかる費用といったランニングコストについても予算を立てておくことが大切です。
合わせてECサイトをいつ頃からスタートさせたいなど、具体的な運用開始時期を検討していきます。構築するサイトの規模により異なりますが、最低でも3ヶ月は必要でしょう。パッケージやフルスクラッチなど自由度の高い方法でサイト構築する場合は、予想以上に時間がかかることもあります。無理のない余裕あるスケジュール設計で開発にあたることをおすすめします。
ECサイト立ち上げのための準備
ECサイトを円滑にスタートさせ運用していくには、リリースまでに準備する必要のあることがたくさんあります。
・特定商取引法の表記
・プライバシーポリシー作成
・メールフォーマット作成
・運用のための人材教育
・データ移行・データ登録
・WEBマーケティング
・クレジット等の決済連携
・アクセス解析の設置 など
中でも、特定商取引法の表記、データ移行・データ登録、クレジット等の決済連携は時間がかかります。スケジュールをしっかりと立てて取り組めるように準備しましょう。
特定商取引法の表記
ECサイトには、必ず特定商取引法について表記しなければなりません。サイトに記載する文面を作成していきます。一般的には下記の内容を記し、企業では法務部等への確認が必要です。
・販売業者 ・運営責任者 ・住所 ・電話番号 ・FAX番号 ・メールアドレス ・URL ・商品以外の必要代金 ・注文方法 ・支払方法 ・支払期限 ・引渡時期 ・返品、交換について
プライバシーポリシー作成
個人情報をWebサイト上で扱うことになるため、プライバシーポリシーの記載が必要です。特定商取引法と同様に、記載する文面を作成していきます。また最近では、クッキー等取り扱いについて変更がありますので、都度更新が必要です。
業務フロー確認
ECサイトで受注が入った時、どんな処理を行い、お客様へ発送するのか。業務の流れの検討はとても重要な項目です。システムが稼働し業務がスタートしてからも、非効率な作業はないか、ミスを誘発するようなフローはないかなど、都度見なおしていく必要もあるでしょう。
メールフォーマット作成
ECサイトを利用したお客様に送付するメール文面を作成します。会員登録時や商品購入時、商品発送、返品交換時などに送信するメールのフォーマットをそれぞれ準備します。
運用のための人材教育
ECサイトをオープンし運用していくための人材教育が必要です。システム操作から帳票管理、データのやりとりなど、運営に関わる業務すべてにおいて、情報共有が必要となります。運用マニュアルを作成しておいてもよいでしょう。
データ移行・データ登録
ECサイトに掲載する商品のデータを用意します。サイトの規模にもよりますが、この作業は時間を要することが多く、余裕をもって準備していきたい作業です。既存のECサイトをリニューアルする場合は、商品データや顧客データを抽出して旧システムから新システムへ移行させます。システムが変更になるためスムーズに移行できないトラブルも十分に考えられます。移行中のデータ破損などの問題に対処できるよう準備が大切です。
【データ登録】
商品の情報、商品名・価格・商品画像・商品説明の文章等を登録していきます。この作業を「ささげ業務」と呼び、ECサイトにおいて非常に重要な部分となります。お客様は商品画像や商品の詳細情報を元に商品を選ぶためです。購入率(CVR)に大きな影響があるこの作業。商品画像のみならず、利用シーンをイメージすることができる画像やモデルカット、動画の撮影、採寸、原稿作成などにも対応する外注を検討してもよいでしょう。
WEBマーケティング
ECサイトをスタートしても、より多くのユーザーに見てもらえなければ意味がありません。WEBマーケティング業務とは、サイトの訪問数を増やし、売り上げを伸ばすための広報活動のことです。SEO対策やSNS運用、広告運用についても、立ち上げの段階からある程度詰めておく必要があるでしょう。
アクセス解析の設置
アクセスを解析しサイトを常に改良していくことも重要です。ユーザーが求めている商品の解析はもちろん、ユーザビリティやアクセスビリティを考慮したつくりになっているか、説明が不足していないかなどの分析と対策も大切です。グーグルアナリティクスの設置及び計測確認が重要になってきます。
ECサイト立ち上げに関するお悩みご相談ください
今後もますますの拡大が予想されるEC市場。小売業などBtoCビジネスはもちろん、BtoBビジネスにおいてもECサイトを運営するのが当たり前の時代となりました。しかし、世界と比較すると日本はまだまだ相対的にEC利用者数が少ないとされています。
ECサイトの規模や予算、お客様に提供したいサービスなどを考慮し、自社に最適なECサイト構築方法と運営方法を選択し、売り上げアップ・事業拡大を目指してください。
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