近年、「AI」という言葉を耳にする機会が急増しました。ニュースやSNS、広告業界のあらゆる場面で取り上げられ、その進化のスピードも日々加速しています。しかし、「AIを使って何ができるの?」「最新技術なら瞬時にAIモデルが作成できるのでは?」という疑問を抱く方も多いのではないでしょうか。生成AIの発展により、EC用画像やデザインなどのクリエイティブ分野での活用が広がり、業界に大きな影響をもたらしています。
代表的な生成AIツールには、MidjourneyやFLUX、Adobe PhotoshopのAI機能などがあります。これらのツールを利用することで、プロンプトを入力するだけで自由に画像を生成でき、従来は多くの時間を要した画像編集作業も瞬時に完了します。広告バナーのデザインから画像合成、EC商品イメージの生成に至るまで、生成AIは、プロのクリエイターだけでなくデザイン経験のない人々でも簡単に成果を出せるようになりました。これにより、生成AIは業界で欠かせないツールになってきました。
弊社でも、最初は模索しながらAI技術の導入に取り組んできました。導入当初は多くの試行錯誤を重ねましたが、現在ではクライアントのニーズに合わせたカスタマイズサービスを展開し、実用化を進めています。今回は、弊社が提供するサービスの概要と、その中で特に重要な「AIモデル生成」と「AI着装(着せ替え)」について詳しくご紹介するとともに、実際に直面した課題や、今後の可能性についても掘り下げていきます。
弊社では、さまざまなクリエイティブシーンで活用できる以下の5つの生成AIサービスを提供しています。
目次
1.AIモデル生成
企業専用のオリジナルAIモデルを生成し、ECサイトの商品ページなどに活用します。また、弊社所有のAIモデルを月額レンタルすることも可能です。
2.AI着装(着せ替え)
モデル画像に衣装をAIで着装するサービスです。これにより、従来必要だったモデルの手配や撮影にかかるコストや工数の削減、効率化が可能になります。
3.AI顔のすり替え
実在する人物の顔をAIで生成した顔に置き換えるサービスです。スタッフのコーディネート画像や、契約期限が切れたモデル画像の再利用などに活用できます。
4.AI背景変え
白壁スタジオで撮影した画像の背景をAIで野外ロケの風景などに置き換えます。人物だけでなく、家電やその他の製品のシチュエーション変更にも対応しています。
5.AIカンプ制作
デザインの初期段階で、AIを用いて提案用のカンプを生成します。
構図イメージの手書きスケッチから生成AIでカンプ作成ができるため、アイデアを素早く形にし、クライアントからのフィードバックを早期に得られます。
今回は、「AIモデル生成」と「AI着装(着せ替え)」のサービスに焦点を当て、制作工程、その過程で直面した課題、課題に対する解決方法について詳しくお伝えします。
オリジナルAIモデル生成サービス
オリジナルAIモデルの制作は、大きく3つの工程に分かれます。
まず、モデルのペルソナ(人物像)を詳細に設定します。ペルソナのイメージに基づき、AIで複数のモデル顔を生成し、その中から最終的に1案に絞り込みます。
次に、2次元で生成した顔画像を3次元化します。あらゆる角度から見ても同一人物として認識できるよう、15度、45度、90度、180度の各角度からの顔画像を追加生成し、LoRA学習を進めます。
■データセット・LoRA学習を行った360度対応の顔イメージ
同時に、ペルソナ設定に基づき、年齢や身長に沿って体も生成しますが、この段階で生成した全身AIモデルに対して1つの課題に直面しました。
【課題】
脚が筋肉質で大人っぽい
今回のペルソナでは年齢7~8歳、身長120cmの設定でしたが、AIが生成したモデルの脚が大人のように筋肉質で引き締まったイメージになり、年齢相応の見た目になりませんでした。
【解決策】
LoRA学習工程では、できるだけ実際の人物の画像をAIに学習させる事で固定化、再現度が増します。
弊社では、同じ身長のキッズモデル画像を事前に撮影しており、それをLoRA学習に追加することで、より年齢に合った脚の再現が可能になりました。
上記のAIモデル生成サービスと合わせて需要があるのがAI着装サービスです。
これは他社も現在力を入れているサービスで、AIモデルに対して置き撮りまたはマネキン撮りをした商品画像をAIでモデルに自由に着せる事ができます。
AI着装(着せ替え)サービス
AI着装の事前準備として、まずは商品の撮影と、商品画像の背景切り抜き、商品の採寸が必要になります。
アパレル商材では特に着用サイズ感が最も重要になるため、実際にAI着装時のサイズ相違がないよう方眼紙を後ろに置いての商品撮影と、身幅・着丈など詳細な情報を元に弊社のAI着装システムを使用し着装を行います。
■AI着装に必要な事前準備
これらの工程を経てAI着装を行った画像ですが、ここでもいくつかの課題に直面しました。
【課題】
袖丈とボリューム感
中綿ジャケットの袖丈が短く、またボリューム感のある生地が薄っぺらく生成されてしまいました。
【課題】
歯のサイズが不自然
子供向けのモデルで笑顔を生成した際、歯が大人のように大きくなり、自然さが欠けてしまいました。
【解決策】
これらの課題に対しては、Adobe PhotoshopのAI機能を使い、最終的な微調整を人の手で行いました。細かい部分の修正は、依然として人間の判断と手作業が必要です。
まだAI技術だけでは完結しない、人的要素が重要
生成AIは、クリエイティブ業務において効率を劇的に向上させる一方で、AI着装時の課題のようにAIだけでは解決できない点も多くあります。AIの生成結果は優れたもののように見えても、人間の感性や判断が欠かせない場面が多々あるのです。
「AIモデル生成」では、クライアントが求める理想的なモデルのイメージを反映させるために、生成後の微調整が必要不可欠です。さらに、着せ替え機能では、AIによって衣装が自然に見えるように調整する必要があるため、色合いや質感、シルエットがリアルに感じられなければ、最終的なビジュアルのクオリティに影響を与えるからです。
こうした人的な要素として、以下の業務が不可欠です。
・クライアントの意図を汲み取り、AIモデルに反映するためのヒアリング
初期の段階で、クライアントが求める具体的なペルソナイメージを正確に捉えることが重要です。
そのため、予めペルソナ項目ヒアリングシートとクライアントの頭の中にあるイメージを参考画像として頂き、頂いた情報から求めているものを作り出す工程が必要です。
・AI生成されたビジュアルの最終的な調整
AIによる生成結果に対して微妙な違和感を人間が確認、解消し修正を行う工程が必要です。
・データの整理と最適化
AIが学習するためのデータの管理もAI学習結果の質に影響を与えます。例えばモデル学習の場合は身長に対しての脚の長さや各体の比率などに影響を与えるため、学習用モデル画像の正確な身長と、フォルダ管理が重要です。
以上のことから、生成AIはクリエイティブ業界に革命的な進化をもたらしていますが、依然として課題が残されています。AIは今後も進化を続けるため、現在は人の手に頼らざるを得ない部分も、近い将来AIによって改善されるかもしれません。
弊社では、AIを活用しつつも、ヒアリングや最終調整などの人的要素を重視しています。
今までモデル撮影やクリエイティブ制作に時間がかかっていたコストや工数を、生成AI活用によりクオリティを保ちつつ削減のお手伝いができるよう、内製化を見据えたサポートをさせて頂きます。
これから主流になりつつある生成AIサービスにご興味のある方はぜひご相談ください。
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