前回は、有限会社KAKAZU企画の代表取締役毛利美菜子さんにご協力いただき、「一人親方の飲食店必見!最もリスクの低いネット通販の始め方【前編】」をお届けしました。
今回の後編は、さらに商品を販売するべく必要な準備、ECサイトの構築などより具体的な話を伺っていきたいと思います。
また、最後に経験者の毛利さんだからこそ語れる、以下のことについてお話しています。
- テイクアウト事業の失敗談
- 新しいことを始めるための「覚悟」と「考え方」
ネット通販に興味がある小規模飲食店店主、オーナー必見です。
目次
毛利流!ネット通販スタートアップの鉄則【後編】
パートナーのOEM先、ターゲット設定が決まったらいよいよ販売するための最終準備が必要です。ここで脱落する方が多いので、重要なポイントとなる部分です。
5. 商品に添付する食品表示(ラベル)を作成する
ネット販売する食品については、食品衛生法や景品表示法などの規制対象となり、食品表示が必要です。食品表示には、その食品の消費期限か賞味期限、保存方法のほか、原材料名、添加物、栄養成分を記載します。これらの情報を商品パッケージや包装容器に記載します。
こういった食品表示の知識も既に自主生産をされているOEM先を見つければ、丸っとアウトソーシングできます。
6. 通販サイトの構築
OEM先、商品が決まったら、いよいよネット通販を始めるECサイトの制作です。とは言っても、ITが苦手な方はここで止まりがち。パソコンも触ったことがない!スマホでネットを見るのがやっと!という方もたくさんいらっしゃると思います。私の夫も例外ではありませんでした。
昨今、BASE、STORSなど無料で簡単に通販サイトを立ち上げられるサービスがあります。カスタマーサポートが付くなどフォローも充実しています。勿論、そもそも自分でやることは考えていない、専門家に任せたいという方はWeb制作会社に依頼するのがおすすめです。
もしかすると、アルバイトの学生さんがやってくれるかもしれません。制作会社に依頼する場合はBASE、STORSなどのカスタマイズであってもそれなりに制作費がかかりますので助成金を申請するなど、資金調達手段も考えておくべきです。
通販サイトは、商品を販売する重要な場です。
「インターネットで調べてなんとか自分で…」と考えるのは間違っています。
通販サイトには、カートや決済機能、商品検索機能などフロントエンドからバックエンドまで多岐に渡る機能が必要となります。
資金調達ができたら間違いなくプロに任せる方が安心です。
7.ネットショップができたことを告知(集客)する
実店舗とネット通販の集客は、全く別物です。実店舗であれば、通りかかった人が看板を見て来店してくれることもありますが、ネット通販はそういうわけにはいきません。
ネット通販の集客方法は、様々ありますが、現在もっとも活用すべきなのが「SNS」です。
幅広い層が見ているのに加え、ターゲットとなる層に届く確率も高く、拡散力もあります。
また、何より大事なのは「顧客リスト」です。お客様に「楽しい」、「便利」と思ってもらうお客様目線は、実際の購入していただいたお客様から得る情報が一番正確です。
お客様の性別、お住まい、購入金額、購入のきっかけなどをリスト化し、マーケティング戦略を考える。それをもとにリピート購入して頂ける仕掛けや、季節イベントのなど企画などの戦略が必要となります。
受発注管理と製造の流れ
私の場合、途中から「受発注管理」も外注しています。他の仕事をやりながら通販の受発注管理は大変です。チェック漏れなどミスが多発します。…いえ、しました(苦笑)。また、お客さんからの問い合わせのメールにも対応しなければなりません。
奥さんや、大きな子供など、身内で時間のある方が責任を持って対応できる場合はそれがベストです。もし周りで頼れる方がいない場合は、必ず専門のアルバイトさんを雇いましょう。
受発注管理は店のアルバイトとは違い、在宅でもできる仕事です。お店に来てもらわないとできないというわけではありません。
また、製造は最初のうちは受注数も少ないのでOEM先のオペレーション効率と、ミスが出ないようにする工夫が必要です。
- 週に一回日曜の夜に注文を締める
- 月曜の朝に受注をまとめてOEM先に連絡
- OEM先は月火水木で商品を製造
- 金曜日に商品を梱包発送
という形をとっています。そうすることでまとめて作業が出来、効率的です。
最後に!テイクアウト事業はおすすめできません
ここまでネット通販の始め方についてお伝えしてきました。
読者の中には「やっぱり自分には無理だ」「他でもっと始めやすいことがあるのでは?」と感じた方もいるかもしれません。
弊社の飲食店でも、「やってみないと分からない」、「やってみて初めてわかる事がある」、というスタンスで、コロナ時代を生き抜くために、様々なことにチャレンジしてきました。
その中でやってみて一番やらない方がいいな、とわかったことは「テイクアウト」です。親方1人とスタッフ1人程度の小さな店で、通常の営業をやりながら不用意に「テイクアウト」を始めるとは危険です。こだわる職人であればあるほど負のスパイラルにはまっていきます。
テイクアウト事業は、想像以上に時間に追われ、利益を考えると悲しい結果に終わる可能性があります。メニューの中から何点かピックアップし、テイクアウトのお弁当に…というほど甘くはありません。
小規模飲食店の場合、一人でできる仕事に限界があります。中途半端にテイクアウト販売を始めても、準備や人件費などコストだけかかり非効率なケースは少なくありません。店主自身の体力も削られ、継続的な営業が困難になるリスクもあります。
勿論、テイクアウトで成功している小さい飲食店もあります。
但し、大抵の場合は、ピザ・寿司・ラーメンなど元々テイクアウトや出前(デリバリー)をコロナ禍以前から日常的にやっているところです。テイクアウトや出前と相性が良いメニューを販売してること、という前提条件があります。
その点、外部にパートナーを置き、事業を組み立て、管理することができるネット通販事業は、小規模飲食店にとって始めやすいチャレンジと言えます。
大事なマインドセット「最初から完璧を目指さない」
開店した時の気持ちを思い出してみてください。「絶対に成功してやる!」と思いつつ、「本当にできるかな?」「お客さんが来てくれるかな?」と不安な気持ちだったはず。
新しいことを始める時は、誰しも不安です。現状を変えることは簡単なことではありませんん。
大事なのは「失敗を恐れず、行動する」「売っちゃう」ことです。
行動する前に頭の中で色々考えると怖くなって動けなくなります。まずはやらないとスタート地点に立てません。やるとまた次の課題が出てきます。「職人気質→完璧主義」を一旦捨て、舵を切ることで見える世界があります。
【プロフィール】
有限会社KAKAZU企画
代表取締役 毛利美菜子
- 1972年4月生まれ。
- 仙台市出身
- 明治学院大学卒
- 新卒で地元の制作会社入社、ラジオ制作部に配属
- 28の時知人の会社で広告業開始
- 美味しそうな料理の写真を印刷した屋外掲示用の大判タペストリーを格安で販売
- 多くの飲食店の集客&売上アップに貢献
- 2004年独立
- 2005年有限会社KAKAZU企画を設立
- 時流に乗って業績を伸ばす
- 2006年料理人と結婚。
- 2011年3月東日本大震災で夫が職を失う
- 2012年7月飲食店「酒と肴もうり」を開業
- 初めの5年は復興景気で経営は順調だったが2017年頃から低迷
- あらためて経営を学び、ブランディングに取り組み1年でV字回復
- 2020年1月飲食店のメニューコンテストで「仙台みそピッツァ」がグランプリ受賞
- 勢いをつけさらに飛躍する年にしようと意気込んでいた矢先、新型コロナの流行で業績が再び悪化
- 逆境に陥る中、新規事業「シェアするガトーショコラ」プロジェクトを開始
- 2021年は「仙台みそピッツァ」も商品化
- 現在「飲食店通販標準化プロジェクト」をたちあげ活動中
- 仕事と並行してビジネス交流会の主催を務め、毎回大勢の経営者が集まり互いのビジネスに貢献し合う場として盛り上がっている
■ブランディング&デザイン
有限会社KAKAZU企画 https://kakazu.co.jp/
■関連事業
飲食店【酒と肴もうり】https://www.kakazu.co.jp/mouri/
仙台市青葉区木町通2-4-36 1F
電話 022-343-8382
通販【MOURIプレミアム通販】https://mouri.easy-myshop.jp/
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私の店でとんかつ弁当を販売しましたが、たった2個でも注文が入れば朝5時起きで米を研ぎに店に行かなければならず地獄でした。前の晩家に帰ったのは1時過ぎであろうと睡眠時間を削って稼働しなければ回りません。
加えて、バックヤードもテイクアウト用の大小様々な容器でごっちゃごちゃになります。どんなに店が暇でも、仕入れ、仕込み、掃除など、やることは沢山あります。