昨今、新型コロナウィルスの影響で私たちの生活は大きく変化しました。特に、飲食店経営者で、以下のようなことで風当たりが強い時代を経験した方も多いのではないでしょうか?
- 営業時間の短縮
- 来店人数の制限
- アルコール提供禁止
- 突然のランチ
- テイクアウト事業の開始
いつの時代も、予想できない事態が起こる可能性があります。今までと同じ方法で売上を維持し続けることは、決して簡単なことではありません。
そこで今回は、「飲食店通販標準化プロジェクト」をたちあげ活動する有限会社KAKAZU企画の代表取締役毛利美菜子さんにご協力いただき、「飲食店のネット通販の始め方」について執筆いただきました。ご自身の体験談をベースにコロナ禍で実践したことの一つ、「ネット通販」について教えていただきます。
目次
ごあいさつ
初めまして有限会社KAKAZU企画の代表取締役毛利美菜子です。私、は仙台で販促物や広告デザインの仕事を20年ほどやっており、ここ数年は「ブランディング」ありきでデザインすることにこだわって営業しています。
東日本震災の後、料理人である夫が職を失ったことをきっかけに2012年から自社で「飲食店」を始め、今年で10年目になります。飲食店を10年続けることは簡単ではありませんでした。
デザインの仕事でクライアントの飲食店にチラシやポスターなどの販促物を作成し、ついでに販促のアドバイスなどもさせていただいたりしていましたが、いざ自分が飲食店を始めると、いかに「飲食店経営」が大変か身をもって経験し、今まで自分が全く飲食店を理解していなかった、オーナーに寄り添っていなかったことを猛省しました。
そんなことから
- 自分の店で実際にやってみて分かったこと
- 自分の店でやってみて良かったことこと
- 自分の店でやってみて良くなかったこと
を、クライアントや同じように頑張っている飲食店に教えていこうと決意した次第です。今回、株式会社ライフエスコートさんからオファーを受け、執筆に至りました。
既にネットショップの開業を検討される方もいるかと思います。しかし、「来店」がメインの地元の飲食店にとって二の足を踏むケースは多くあります。 主に以下のような悩みでは無いでしょうか?
- 通販の壁は高く
- 一体何から始めれば良いのか
- 本当にできるのか
大丈夫です。その不安は健全です。「ネット通販」は少なくともこの記事を読んだ後に始めても遅くはありません。
2~3人体制で切り盛りしている1人親方の小さな飲食店がネット通販を始めるにあたり、もっともリスクと労力がかからないであろう現実的なノウハウを今からお伝え致します。
今回、私が説明するネット通販スタートアップは、自分で作らず、ネット通販を丸っとOEM化(外注)する方法です。勿論、OEMだから簡単というわけではなく、最初の商品づくり、ECサイト制作など、それなりの心構えとエネルギーが必要です。
飲食店がネット販売をスタートすることによって、ビジネスの形は大きく変化します。この記事を読み進めることで、1商品からでもネット販売の一歩目を踏み出してみよう!と勇気が出るはずです。
飲食店がネット通販をスタートするメリット
まずは、具体的な始め方を進める前に、今、飲食店がネット通販をスタートするメリットについて説明します。
フードデリバリーやテイクアウトなどコロナ時代を生き抜くための手段はありますが、「状況を選ばず売上を確保できる」「効率よく売上を伸ばせる」ことを考えると、ネット通販がおすすめです。
メリット1. 営業制限や天候に左右されずに売上が安定する
来店がメインの飲食店は、外出率が売上に直結します。悪天候やウイルス蔓延する状況下、同僚や友人と会食や飲み会をしようと考える方はほとんどいません。常連客で賑わう人気店ですら、状況次第でガラガラになるほど飲食店は状況に左右されやすい業種です。
ネット通販は、このような外出率に左右されず販売できるという最大のメリットがあります。スマホ1つで場所や状況に縛られることなく誰でも商品を購入でき、店舗の営業時間外でも注文を受け付けることができます。
メリット2. 効率よく売上を伸ばせる
ライン営業やテイクアウトに比べ、ネット通販は、注文を受けてから商品を用意することもできるので、店舗販売よりも大幅に食品ロスを減らせます。特に、OEM販売を取り入れることで、設備投資やランニングコストも抑えられ、比較的効率よく売上を伸ばすことができます。
メリット3.全国を対象に販売できるのでファン獲得に繋がる
実店舗は、ターゲット層がお店の周辺や交通機関で来店できる範囲に限られます。読者の皆さんもネットで美味そうな料理を見つけても、「お店が遠くて行かれない」と諦めた経験ありますよね。
ネット販売であれば、物理的な距離や移動範囲は関係なく、今までよりも幅広いお客様にアプローチができます。例えば、YoutubeやInstagramなどのSNSを活用することで、日本全国、海外のお客様に向けて商品を認知してもらうことも可能です。
毛利流!ネット通販スタートアップの鉄則【前編】
飲食店がネット通販を始めるメリットが分かったところで、いよいよ本題の始め方についてお伝えしていきます。少し長くなるので、前編・後編と分けて説明しています。
1.大前提!売るものを「自分で作ってはいけない!」
- 「自分のお店のことなのに、自分でやらないの?」
- 「一体だれに任せれば良いの?」
と疑問を抱く方も多いでしょう。
1人親方の小規模飲食店のネット通販は、外注化、つまりOEMがおおすめです。勿論、頼れるOEM先を見つける労力はありますが、それ以上のメリットがあります。
夜の営業もしつつ、ランチ営業もして、コロナ禍でテイクアウトもスタート。この状況でネット通販を始めることは不可能です。だからと言ってアルバイトを雇えば人件費もかかります。持続可能とは言えません。
しかも、(ここが一番重要!)もし店主自身が怪我や体調不良で倒れたら、全ての収入がストップしています。OEM化は、このような悩みを全て解決してくれる良き手段となります。
また、食品をネット販売する場合、菓子製造業、生肉加工業、惣菜製造業といった食品の種類に応じた営業許可が求められます。許可証を取得するには管轄の保健所に申請を出し、基準をクリアしなければいけません。初めての場合、商品に対しどのような許可が必要か調べ、実際に認可されるまでにそれなりのお金と時間がかかることでしょう。飲食店がそれをすることはリスクが高過ぎます。
2.OEM先の探し方
私がおすすめするのは「福祉事業所」です。主に以下のような事業所です。
- 菓子製造
- 生肉加工
- 惣菜製造
福祉事業所は必ず許可を得て製造販売しています。
弊社の飲食店を例にあげると、人気の「親方特製ガトーショコラ」に関して、来店されたお客様には店のキッチンで焼いてそれをお店で提供することはできますが、同じものを通販で販売することはできません。「菓子製造業」の認可が必要になります。
そこで弊社では、近所でクッキーなど洋菓子を製造販売している福祉事業所の洋菓子屋さんに製造をお願いすることにしました。
福祉事業所は少量でも製造してくれる良心的な事業所が多いことも大きなメリットです。OEMを請け負う民間の会社は最初のロットが多く、しかも買取という場合がほとんど。賞味期限内に販売できなければ全て廃棄となります。これで失敗する飲食店も少なくありません。どんなにオーナーに力量があってもリスクがあります。
市区町村に問い合わせをすれば、事業所の情報を教えてくれます。また、以下のように、障害者施設・高齢者施設・保護施設を手広く運営されている社会福祉法人に直接問い合わせしても良いかもしれません。
3.「誰に」「何を」「どのぐらい売上目標」売るかを決める
OEM先が決まったら次は、誰に、どのような商品を、どれだけ購入してもらうのかという具体的な決め事が必要となります。
①誰に
最も重要なのは、誰に売るか、ターゲットを決めることです。
うちの店の場合、ターゲットをこのように設定しました。
- 「お店のお客さんとそのご家族」
- 尚且つ「バリバリ忙しく働いていて、美味しいものにはお金を出す、家では極力何もしたくないズボラな人」
限りなく労力を少なくスタートするために、このようにまずはお店のお客さんに販売することから始めることをお勧めします。
②何を
次は、商品開発。自店の名物料理を商品化するのか、他では手に入らない希少なものを見つけて仕入れて販売するか、など、視野を広げて考える必要があります。
また、「高単価商品」に仕立てることも重要なポイントです。個人店が売上げを安定させるための必須条件です。大事なことは「高単価でも喜んで買っていただける付加価値のある商品にすること」です。
①で決めた「誰に」をもっと絞り込んで、そのお客様の喜ぶ顔を思い浮かべながら考えましょう。これはブランディング用語で「ペルソナ」と言って基本中の基本であり、最重要テーマとなります。
▼「高単価商品」にするためのヒント
- 高級食材
- 高級食材を使用したもの
- 希少で入手困難なもの
- 受賞歴のあるもの
- 有名人が監修したもの
- ギフト仕様 …など
私の店の場合は、「親方特製ガトーショコラ」をギフト商品としても利用できるようにし、材料をフランス産の高級チョコレートに切り替えて開発し直しました。
また、設定したターゲット(ペルソナ)は包丁で切り分けるのが面倒だろうと想像し、最初からカット済みのガトーショコラにしました。
\ギフト商品の場合、パッケージも含めて商品です/
ロゴ、パッケージ、パンフレットなど全てのデザインに注力する必要があります。この場合は補助金などを活用し、プロのデザイナーに依頼することを強くおすすめします。助成金の申請サポートも始めから自分でやらず、手数料を支払ってでもプロに一緒に取り組みましょう。
③どのぐらい、目標売上
まずはコロナ禍で減少した売上分を補填することを目標とします。金額としては「30万円」。高くはない目標かもしれませんが、初めの一歩としてはなかなかの目標です。
ここまで来ると少しずつ前進したと実感が湧いてくるはずです。
- 「なんとなく自分のところでもできそう」
- 「やっぱり、ネット通販を始めるのは大変」
感じ方は人それぞれかもしれません。しかし、大事なのは覚悟を持って、一歩を踏み出すこと。
次の記事では、商品販売に向けた「制作」「集客」、そして、大事なマインドセットについて詳しく説明していきます。
>>一人親方の飲食店必見!最もリスクの低いネット通販の始め方【後編】
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