AIで何でもできる？EC画像生成の”今の限界”と活用前に注意すべきポイント

ここ数年で、画像生成AIは驚くほど進化を遂げ、今や誰でも手軽に「それらしい画像」が生成できる時代となりました。

画像生成や画像編集に特化したさまざまなツールも次々と登場し、ECやSNS、広告業界を中心に「生成AI＝即戦力」のイメージが広がっています。

皆様の中にも、生成AIツールを活用し画像生成を試された経験がある方は多いのではないでしょうか？

比較的簡単にビジュアルを生成できるようになった一方で、初回の生成結果のイメージが良かったのに、部分修正や再生成を試した結果、イメージとまったく異なるものが出来上がってしまい、何度も生成を繰り返すことで想定以上に時間がかかってしまった、というご経験をされた方も少なくないかと思います。

弊社が提供している「Visual.AI」は、まさにその再現性の不安定さを制御し、EC用途に特化した生成AIのシステムです。

今回は、サービスの中でもアパレル商品をモデルに着せるAI着装（試着）について、実際に生成AIで対応できること、できないことについて事例を交えつつ、EC商品画像として生成AIを活用するにあたり注意すべき点について紹介したいと思います。

AI着装におけるよくあるご相談
クリエイティブにとっての一番の課題は生成AIの再現性
AIで対応可能な範囲と、手動加工が必要な範囲を明確にすることが重要
今後の法整備にも注視が必要
著作権・商用利用の確認もお忘れなく
EC商品画像として使用する際のリスク回避
生成AIと人の技術の掛け合わせでクオリティアップ

AI着装におけるよくあるご相談

AI着装をご依頼いただく中で、以下のような相談を受けることが多くあります。

「商品にできてしまったシワをAIで修正できますか？」
「撮影時に写り込んだ影を自動で取り除けますか？」

AI着装は、撮影した商品画像の柄・シルエット・デザインを忠実に読み取り、モデルのポーズに合わせて着装を行う仕組みです。

そのため、元画像に意図しないシワや影が含まれていると、それらも「商品情報」として認識され、そのまま反映されてしまうのです。

このような不要な情報をAI側で取り除こうとする場合、いわゆる「ガチャを引く」ように再生成の繰り返しが必要になります。

シワや影が写らない生成結果が出るまで、何度も画像を生成
指定箇所にプロンプトで細かな指示を出すが、安定した結果が得られない

結果として、本来作業効率を上げるためのAIが、かえって時間と手間を増やす要因となってしまうケースも少なくありません。

そのため、これらの修正は現実的にはPhotoshopなどによる手動加工で対応する必要があるのが実情です。

クリエイティブにとっての一番の課題は生成AIの再現性

生成AIの出力結果は、毎回少しずつ異なるのが基本です。

これは「ランダム性」「創造性」といったAIの特性によるものであり、アートやアイデア創出には向いている反面、ECのように、正確性・一貫性が求められる用途では大きな壁になることがあります。

特に商品画像においては、

商品の形状
素材感や肌の透け感
柄の位置やステッチ
カラーや明度、質感のバランス

これらすべてが、ユーザーの購買判断に直結する重要な要素です。

たとえ小さなズレでも、「届いた商品が画像と違う」という印象に繋がれば、返品やクレームのリスクは避けられません。

AIで対応可能な範囲と、手動加工が必要な範囲を明確にすることが重要

生成AIを導入するうえで大切なのは、「AIでどこまで対応できるのか」と「どこからが人の手での加工になるのか」を、制作側・依頼側双方で事前に明確にしておくことです。

「すべてAIで完結できると思っていたが、あとから追加費用が発生してしまった」と言うようなトラブルを未然に防ぐためにも、最初の段階で共通認識を持っておくことが必要です。

以下に、生成AIで対応可能な範囲と、手動対応が必要なケースの一例をまとめました。

AI生成モデル（人物）

【AI対応可能な範囲】

顔の印象変更（例：20代から30代への年代変化）
顔のパーツ（目・鼻・輪郭）の微調整

※AIによる人物モデル生成で比較的安定して対応できる領域です。

プロンプトや設定次第で自然なイメージ調整が可能なため、ブランドのターゲット層に合わせたモデル表現に有効です。

【AI対応不可、手動対応が必要なケース】

正確な身長・体重の指定（160cm・50kgなど）
チークやリップといったメイクの追加

※物理的な体格の正確な反映や、化粧の細やかな表現は、現時点ではAI単独での制御が難しく、画像生成後に手動でのレタッチ作業が必要になります。

物撮り/マネキン着用の商品をAI着装

【AI対応可能な範囲】

フィット感や着丈の調整
モデルのポージングに合わせた自然な着装）

※形状がある程度シンプルな商品であれば、AIは比較的高い精度でモデルへの着装処理が可能です。特に、Tシャツやシャツ、シンプルなワンピースなどはAIとの相性が良い商品となります。

【AI対応不可、手動対応が必要なケース】

ステッチや柄の正確な位置再現
異なるリブ幅・素材感の再現
写っていない部位の生成（背面、裏地など）
色味補正、商品にできたシワや影の除去

※商品ごとに異なる「再現性」が求められる部分であり、AIに完全な判断を委ねることが困難です。視認できない箇所の補完や素材特有の表現は、熟練のレタッチャーによる手動加工が不可欠な作業となります。

モデルや商品材の背景画像生成・合成

【AI対応可能な範囲】

背景の全体変更（ロケーション差し替えなど）
部分的な変更（背景の一部差し替えなど）

※野外の光の調整の再現度も高く、背景シーンとあわせて自由に変更可能です。

【AI対応不可、手動対応が必要なケース】

被写体と背景のピント／明るさのバランス調整

※場合によりAIで対応できる内容もありますが、対応できない点は、被写体の光源と背景の照明環境を一致させる繊細な調整が必要です。これらはAIだけでは完全には対応できず、人の目と技術による補正が求められます。

また、商品によってはAI着装に不向きなものも存在します。

例えば以下のようなケースが該当します

着ぐるみやコスチュームのように構造が複雑なもの
腹巻き、ベルトなど身体の一部にしか装着しない小物類
シンメトリーなどのデザイン性が極端に高い商品

このような商品は、AIが「人間がどのように着用するのか」の判断ができず、誤った着せ方をしてしまう可能性が高くなります。

現時点では、AIの知識・学習データがそのような構造や装着スタイルを十分に理解していないため、的確なアウトプットが得られにくい状況です。

一方で、こうした「現在はAIで対応が難しい」とされている領域も、AI技術の進化により対応可能になる可能性が十分にあります。

新しいモデルの学習、生成アルゴリズムの改良、ワークフローの最適化などにより、今まで人の手で行っていた作業が、近い将来AIで処理できるようになる可能性も大いにあります。そのため、弊社では常に最新のアップデート機能を導入・テストをしながら、お客様のご要望に添えるよう準備をしております。

今後の法整備にも注視が必要

日本国内ではまだ法的な規制が整備されておりませんが、2025年9月より中国では、AI生成コンテンツに対しラベル表示が義務化されました。

具体的には、

視覚的、聴覚的なマーカー（明示的表示）
タデータや透かしによる識別（暗黙的表示）

これらを組み合わせた「生成物であることの明示」が法律で義務化されています。

出典：2025年9月、中国で新たなAIコンテンツ表示法が施行https://marketingtrending.asoworld.com/jp/news/china-enforces-new-ai-content-labeling-law-in-september-2025/

日本でも今後、同様の法整備が進む可能性は十分にあるため、今のうちから生成AI画像を使う際のルール整備が求められます。

著作権・商用利用の確認もお忘れなく

もう一つ注意すべき点が、AIツールのライセンスや商用利用の可否です。

現在はさまざまな生成AIツールが登場しており、ChatGPTをはじめ、Flux、Nano Bananaなどツールによって利用条件が異なります。

特に以下の点に注意が必要です。

無料プランでは商用利用が禁止されていることがある
学習データに著作権侵害の可能性がある素材が含まれていることがある

弊社では、商用利用が明確に許可されたツールのみを使用し、学習データにも問題がないよう配慮しております。

さらに、万が一のトラブルに備え、業務委託契約書に責任の所在を明記した上で発注を行う体制を整えております。

EC商品画像として使用する際のリスク回避

AI着装を行った画像をECサイトで使用する際に注意すべき点は冒頭でも述べた「ユーザーの誤解を招かない」という視点です。

生成AI技術が広く普及したことにより、画像がAI生成かどうかを見分けられる消費者も増えてきています。そのため、AI着装した商品画像と実物商品の形状が異なるなどのクレームや返品に繋がるリスクを事前に回避するため、多くの企業様がAI生成画像の下部に「※画像はイメージです」などの注意書きを添える対応を行っております。